自然と共生してきた先住民族の歴史

4月22日は「ブラジル発見の日」と呼ばれる記念日です。1500年のこの日、のちにブラジルと名付けられることになる大地にポルトガル人がはじめて上陸を果たしました。
しかし、その大地には、それよりはるか以前から先住民族の暮らしがありました。1500年当時の先住民族の人口は、ブラジル全土で300万人にものぼったといわれています。
さらに最近の研究では、土壌に残された焼き畑などの人間活動の痕跡から推定して、アマゾン地域だけで800万人もの先住民族がいたという仮説すら出されています。
アマゾンの森は、森を壊さずに自然と共生して生きる知恵を持った人びとの、活発な人間活動のある場所だったといえるでしょう。

多様な文化を生きる先住民族

ブラジル全国の先住民族の現在の人口はおよそ90万人で、そのうち48%の人がアマゾンに暮らしています。
国の人口に占める割合は0.47%とわずかですが、ブラジルの先住民族は、305の民族、274の言語という民族的・文化的な広がりを持つ多様性に満ちた社会を形づくっています。
1500年以降、植民地化が進められた過程で、先住民族は入植者が持ち込んだ病気や虐殺などにより急速に人口を減らしました。
最も数が減少したとされる1957年には、全国にわずか7万人が残るにすぎませんでした。その後、先住民族全体の人口は回復に転じましたが、小さな民族や言語の消滅はいまも進行しています。

ブラジル憲法が保障する先住民族の権利

ブラジルでは1985年の軍事政権終了後、1988年に民主主義に基づく新憲法が公布されました。
そこでは先住民族が独自の社会集団や習慣、言語、信仰、伝統を持つ人びとであり、そのような固有文化を彼らが保持する権利が認められました。そしてブラジルにおける彼らの先住性をはじめて公式に認め、暮らして来た土地への権利を永続的に持つこと認めています。
先住民族が居住と利用の権利を有する土地は、境界画定と呼ばれる認定作業によって決定されます。つまり、土地の境界線を画定して、その内側を先住民族保護区に定めるというものです。
先住民族の人権保障プログラムや境界画定の作業プロセスは、法務省の下部組織であるFUNAI(インディオ保護基金)が担ってきました。しかし2019年1月に発足した新政権は、FUNAIを法務省から女性・家族・人権省の下部組織へと移管。また境界画定業務を、FUNAIから農牧供給省へと移管しました。農牧供給省はアグリビジネス振興を主要な任務とする機関です。

“アマゾンの森の守り人”として

先住民族保護区は全国に505ヶ所あり、先住民族の57.7%がそこに暮らしています。
保護区の総面積は国土面積の12.5%にあたる107㎢で、うち98.33%がアマゾンに集中しています。アマゾン開発がますます推進の方向へと向かうなかで、先住民族保護区だけにかろうじて森が残されているという現状があります。
アマゾンのすべての先住民保護区の森が蓄える炭素量は130億t(二酸化炭素換算で468億t)であり、また2006〜2020年の間に4億3100万tの二酸化炭素を吸収するという試算があります。
カヤポ民族はアマゾン熱帯林保護への貢献が評価されて、2015年に国連が設置する「赤道賞」を受賞しました。
同年12月、パリの気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に合わせて開かれた授賞式で、カヤポのラオーニ大長老は「森の守り人」としての誇りをこめて、世界に向けて「アマゾン保護への協力」を呼びかけました。

先住民族の生活
Page Top